12月14日土曜日に、ドラゴンクエストXという広い世界のちいさな教会で知り合った男女が、現実の世界の東京で会う事になりました
■登場人物■
僕(仮名)
ノーイメージ
宮城那波
彼女が食べた牛タン定食
二人で交わした約束のバンド
名古屋🔛東京という距離をたったの2日間、48時間で育んだ愛はその物理的距離を縮める事ができたのか?
池袋と秋葉原のデートを綴ったピュアで切ない愛の物語を一生懸命書きました!
どうぞ!お楽しみください!
A simple event prompted me to start worrying about the future of her life.
この摩天楼が墓標だとしたらきっとすごく偉い人たちが、その下に眠っているんだろうな。
東京、池袋。
行き交うたくさんの人々の中、真冬の冷たい風が容赦なく吹きすさぶ歩道を歩く僕の隣には女がいた。
肩で髪を切り揃え、僕よりも5つ年下の触れる生身の異性━━━どこにでもあるクリスマスのラブソングのようなシチュエーション。
他愛のない会話をいくつか交わし、女の子とデートという有り得ない妄想が現実になった。
オタクの僕が女の子とデート?
この数奇な因縁は2か月前に遡及する。
「コンパスフェスで東京に行くの」
「俺、東京住みだよ」
「だったら案内して」
とんとん拍子でオフ会する事が決まり、今までほとんど付き合いがなかったのに、Xでポストのやりとり、ドラクエXではまるで相方かのように自分の隣に押しかけてくる。
軽い冗談のつもりで誘った約束が、まさか本当にオフ会になるなんて、ゲームで忙しい貴重な時間を割いて作った逢瀬の機会━━━それが今だった。
「ねぇ、兵庫の斎藤知事、辞めたらタレントになりそうだよね?」
自動生成される女の台詞スクリプト。
「ありえる、ありえる……」
賛同する僕の言葉をLINEの着信が遮った。
「あ、ゴメン!ラインだ」
僕は話の腰を折り、スマホを取り出し、マゴマゴとした手つきでラインを開く。
『貴方のことが好きです、付き合って下さい。 送信者名・・・ 』
僕は送信者名を見て、驚いた。ラインを送信する素振りなど見せなかった、隣にいる宮城那波からのモノだったからだ。
今、隣にいる女は僕が作り出した妄想なのか?モテないのが祟ってついに現実と虚構の区別が付かなくなったとか?いや、もしかしたら他の人には見えないだけで存在はしている・・・・・・って、やっぱり、妄想かーっ!
僕は思案に暮れ、ゆっくりと顔を上げ、女の顔を確認する。目線を足元に落とし、僕から顔を背けていた。白いうなじがクリスマスカラーのように赤く染まっている。
あ、そう言えば予約した時間にラインが届くようにできる機能があったような。
僕はそう検討をつけると、その場から逃げ去りたい衝動に駆られた。
こんなドラマや漫画の見すぎとしか言いようのない告白方法を正気で実行できるサイコ女が怖い。
現実と虚構の区別がつかないメルヘンチックな演出は、冬空から真っ赤な雪が降って来て血の海になるくらいの異常現象。
しかし。
僕はその場から逃走しなかった。
なぜなら僕が最も畏怖したのは、こういう女を下手に傷つければ後で何をされるか分からないからだ。
僕は恐怖に負けぬよう意志を強固な鋼鉄と化し、ラインの続きを読む。
稚拙な文字で、どうして僕を生贄に選んだのか、好きになった理由が書かれていた。
文字を読み進めて行くうち、どんどん血の気が引いていく。
全く身に覚えのない、むしろ気に留めてさえいない言葉で、僕が勝手に美化されていた。
僕は言葉を失った。
今、どんなちっぽけな衝撃であったとしても、僕の凍てついた心は粉々に砕け散り、ロストするだろう。
ガラガラガラ。
末尾の文字を読み心が砕けた。
『返事を下さい』
今なのか、本当に今言わないといけないのか?
このままだと確実に殺される。嫌だ嫌だ、僕は生きて痛い痛いダメ人間なんだ!
ガクガクプルプル、た、助けて、助けてくれよ、ママン。
ひー、怖いよ、ど、どぼしよー。
僕の頭の中を馬と鹿に騎乗した思考がグルグルと駆け回る。
当然、良い考えが浮かぶ筈もない。
雑踏の全てが自分を急かす早鐘のように焦燥感を駆り立てる。
ええい、どうせ死ぬなら格好よく思ったとおりのことを言って死んでやる。
考えるのが面倒になった僕はやけを起した。
「あのさ、嬉しいんだけど。その俺、何かと忙しくて━━━ラインの返信とかも遅れががちだから」
最初で最後になるだろう心から思うことを、脚色することなく伝えた。
僕の言葉聞いた女は俯き、なにやら思案を始める。
ああ、もういいや、死んでも悔いは残らない…訳がない、物置に山積みになっているゲームの封くらい開けておけばよかった。
作りかけのガンプラ。
そういえば、あのアニメの映画、見たかったな。
次々と未練が心の奥から染み出してくるが、審判の時はやってくる。
朝の来ない夜はないんだ、怒畜生!
「じゃあ、暇になったらそっちから告白してね」
声、表情、雰囲気。
僕にとって不利益になる要素が微塵も感じられない判決。
もしかして、僕は助かったのか?バンザーイ、バンザーイ、バンザーイ。
喜んだのも束の間、安堵が冷静な思考を連れてくる。
暇になったらソッチからまた告白してよ、どういう意味だ?
僕は女の判決の意味をよく考えてみるが、気象予報士の資格を持たない僕には秋の空の天候など分かる筈もない。
「えーと、どういう意味?」
僕は恐る恐る言葉の注釈を求めると、女は薄っすらと微笑む。
「そのままだけど?」
め、目が怖い。
「そ、そのまま?」
僕は声がうわずらないようにだけ注意して相槌を打ち、意図を考える。
僕が暇になるまで付き合うのを待つという意味なのかしら?
それとも僕が付き合いたくないのを理解して、お友達のままでいようということを理解してくれたのかな?
ちらりと様子を伺うが……き、キケネー。
こういう場合、常に最悪を想定し、非常事態に対する気構えを用意するのが僕の処世術だ。
いつまでも待たせているのは悪いと思い、暇になったから付き合おうと告白するが、女には既に別の男と付き合っている。
僕がもう知らない彼女と彼氏に笑われ、大恥をかく。
汚れ芸人としては最高にオイシイ展開だが、僕にだって誇りはある。
僕が汚れだと笑われていいのは、エル子の美少女だけなんやー!
結論が出た。
「たまにしか会えないけど、それで良かったら付き合ってみる?」
僕の告白に、女は満面の笑みで頭を振り肯定する。
こうして見れば普通に可愛い女の子。
だが、頭はサイコだ。
本当に現実はままならない。
「じゃあ、コレ」
女はポケットから花柄の小さな紙袋を取り出し、僕に差し出す。
紙袋にはくっきりと内容物が想像できる跡がついていた。
僕の背中を滝のように汗がながれ体温を奪っていく。
真冬に脱水になるくらい冷や汗がでる衝撃的なプレゼント━━━コンドームだった。
イキナリ婚前交渉OK?
わ、訳わかんねーと理性では拒絶しつつも、鼻の先で揺れる布越しの双丘とリンスの薫りが千年パズルを解き、もう一人の僕が元気になる。
勝負だ、もう一人の僕。
デュエルが始まるが、あっさりと決着がつく。
「いや、その、まだそれは幾らなんだも早すぎませんか?」
貞操を大事にする箱入り娘のような反応をする僕とは裏腹に、女は平然とセセラ笑う。
「そう?普通だよ。そうだ、もし私が上京したら一緒に暮らしましょうよ」
イキナリ同棲宣言?
流石の僕でもこれは切れた。
もしも同棲なんてしたら一人の時間がなくなるじゃないか!
「ま、まずは手を繋ぐところから始めませんか?」
「たー、これだからオタクは」
いきなりタメ口で男みたいな喋り方に豹変する宮城那波。
「ギクぅ、どうしてそのコトを、おぜうさん」
僕は必死に隠していたのに。
「あはは~そんなの見りゃ分かるつーの」
僕が太っているから?
それともメガネを掛けているから?
うーん、うーん、うーん。
僕の擬態は完璧だった筈。
「それそれ、その仕草ッ!」
大笑いしながら僕を指差す那波。
僕は自分を顧みる。
両腕で頭を抱えて悩んでいた。
「フツー、そんな仕草ってしねーつーの、キャハ。つーか、女に幻想抱き過ぎ。アタシもさー、別に処女じゃないし、童貞君と手ほどきしたことない訳?分かる?」
フルフル。(否定)
「それにさ、童貞クンだと操縦し易すそうじゃん!下手に遊んでる男よりも身持ち硬そうだし、鉄板っぽい?」
お、女はおっかねぇ!
「で、どうする、今からホテルでエッチしよっか?」
女の目が妖艶に光り、チロリと舌先を覗かせる。
エル子の美少女にはない、女の色香に僕は━━━。
ドラクエ10の出会いなんてだいたいこんなもん!
でも、ふたりが幸せになるといいですね!
今度は恋愛リアリティショウを企画しています!
興味のある方はぜひご一報を!
そこに愛はあるんか~?
↓↓ドラクエX、関係あった??↓↓